コロナ禍により、これまで当たり前に思っていたことが、そうではなくなりました。皆さんも、従来とは異なる就職活動を進めていくうえで、さまざまな不安を感じていらっしゃると思います。
第一生命グループも、例外なくさまざまな影響を受けました。しかし、生命保険は保険金・給付金などのお支払いを通じて人々の暮らしを守り、これからの人生や未来に希望を託す人に寄り添う存在です。私たちはどのような環境下であっても、お客さまの生活に安心を提供するという社会的使命を果たさなければなりません。その矜持が、第一生命グループ約7万人の社員の原動力となっています。そのうえで、お客さまや社員の健康と安全を第一に考え、非対面・デジタルを組み合わせた営業活動や全社的なリモートワークをいち早く実現したほか、全国各地の自治体と協働した感染防止対策への協力をはじめ、地域の事業者や医療従事者の支援など、コロナ禍における新たな社会課題の解決にも果敢に挑戦しました。第一生命グループは、1902年の創業以来、生命保険事業を通じてその時々に必要とされる安心をお客さまに提供するとともに、社会課題の解決に貢献してきました。「社会課題解決への挑戦」は、創業者矢野恒太の「世間の人が喜ぶか、なくてもいいと思うかを考えよ」という考えのもと、創業来大切にしてきた信念です。こうした信念は、第一生命グループの事業展開が日本から世界各国へと広がった今も、そして今後も変わることはありません。
私たちが解決に向けて挑戦すべき社会課題とは何でしょうか。「人生100年時代」が到来し、人々は長寿を手にしました。そして、以前に比べて物質的に豊かになり、モノに対する欲求は比較的満たされるようになりました。しかし、日本は先進国のなかでも「幸せ」の実感が高くないといわれています。その理由は、モノへの欲求は満たされていても、心の欲求や安心が満たされていないためです。つまり、「将来にわたって、自分らしく幸せだと思える人生を送ることができるのか?」という人々の不安が解消されていないのです。
たとえば、医療技術の進歩によって平均寿命が延びる一方で、健康寿命との差、つまり何らかの病気を抱えながら生活しなくてはならない期間は縮まっていません。また、長寿化によって老後の資金について多くの人が不安を感じています。そして、核家族化が進み単身世帯も増え、地域との結びつきが薄い都市部への人口移動が続いています。
さらには、コロナ禍において物理的距離が遠くなったことにより、心の欲求や安心を満たすはずの「人と人とのつながり」は更に希薄になっています。
こうした環境のなかで人々が心から望むものは、幸せな人生や自分らしい生き方を実現することでしょう。そこで、私たちはグループビジョンを「Protect and improve the well-being of all (すべての人々の幸せを守り、高める。)」へと改めることにしました。
私たちは、「well-being(幸せ)」とは、一人ひとりが、安心に満ち、豊かで健康な人生を送り、幸せな状態であることだと考えています。その実現のために、私たちは従来の生命保険事業の役割である「保障」を磨き続けるだけでなく、一人ひとりに合わせた「資産形成・承継」、「健康・医療」、さらには人と人、人と地域や社会との新しい「つながり・絆」を紡いでいくことに挑戦していきます。この新たな挑戦を通じ、私たちは率先してお客さまのクオリティ
オブ ライフ(QOL)向上に貢献していきます。
また、私たちの追求する「すべての人々のwell-being(幸せ)」は、持続的社会があってこそ実現するものです。生命保険事業は、お客さまから保険料をお預かりし、お客さまの子ども世代に保険金をお渡しするという、今の世代と次の世代の橋渡しの役割を担っています。近年、気候変動や生物多様性の保全など、社会の持続可能性が大きく問われており、次の世代が安心して暮らせる社会を構築することが重要な課題となっています。しかし、このようなさまざまな社会課題の解決を未来の子どもたちに押し付けることがあってはなりません。こうした考えのもと、第一生命グループは次の世代を含むすべての人々のwell-beingのために、100年後を見据えた持続的社会の実現に向けて、国内外におけるサステナビリティの向上を事業運営の根幹と位置付けて取り組んでいます。
第一生命グループがお客さまや社会の課題に向き合い、これらの課題解決への貢献を通じて持続的な成長を遂げてきたのは、「人」の力があってこそです。経営環境の変化のスピードがますます高まるなか、それに対応して企業を変革していくために最も重要な経営資源は「人財」であるという考えのもと、社員一人ひとりが個々の能力を最大限に活かし、伸ばすことができるよう、積極的な人財育成に取り組んでいます。専門性を持つだけではなく、先見力・想像力を活かして生命保険事業の変革に向けて果敢に挑戦し、あらゆる垣根を越えて周囲を巻き込み鼓舞しながら、自らをさらに成長させることができる人財へと育成すべく、社員に多数の学びの機会を提供しています。今後も、社員一人ひとりの能力開発と人財の多様化を、より一層推進していきたいと考えています。
第一生命グループが持続的成長を実現していくために大切なことがもう一つあります。それは、社員一人ひとりが「働いていることに誇りを持てるグループ」になることです。お客さまのwell-beingをサポートしていくためには、その役割を担う社員一人ひとりのwell-beingをまず確保することが重要です。一人ひとりが誇りを持ち、イキイキと働くこと、そしてこうした社員を全社的に後押しし、支援する体制・環境を整えることで、会社と社員との良好な関係性を示す「エンゲージメント」の向上に取り組んでいます。
また、2020年7月、約10年ぶりとなる大規模な人事制度改定を行いました。社員一人ひとりの価値観やキャリアビジョンが多様化するなか、役職や年齢にかかわらず個性を発揮できる環境や、自律的な成長を促す仕組みを整備しました。「個」の能力を活かし、伸ばす人財育成とともに、その個性を活かし切れる「組織」を創っていくことで人財価値の向上につなげています。
これらの人財戦略を通じ、社員一人ひとりが自身の仕事を通じてお客さまや社会の課題解決に貢献しているという誇りと、変革を恐れない前向きなエネルギーを持ち、意欲的に成長していくことを期待しています。そして、お客さまや社会などステークホルダーからの信頼を高め、ひいては企業価値向上につなげていきたいと考えています。
若い頃、社内研修で「陽転思考」という言葉を知りました。単に元気に明るく振る舞うということではなく、「物事をありのまま受け止め、最善を尽くす努力をする」という考え方です。例えば、コップの中に入っている水を見て、「半分しかない」と捉えるのではなく、「半分もある」と肯定的に捉えることです。私は、この考え方を拠り所とし、これまで自分自身の置かれた状況で常にベストを尽くしてきました。
生命保険事業を取り巻く環境は決して明るいものばかりではありません。加えて、コロナ禍がもたらした社会・生活様式の変化は、生命保険事業のビジネスモデルにも変革を迫りました。そうしたなかで、最先端テクノロジーを用いて、これまでは提供できなかった領域でサービスを提供できるようになったほか、アフターコロナの新たなニーズに対応していくことで、お客さま・社会のお役に立てる領域は広がり続けていると感じています。
経営環境がめまぐるしく変化するVUCA時代だからこそ、若い皆さんには「陽転思考」を持ち、変化を絶好のチャンスと捉えて何事にも挑戦し、大きく成長してほしいと思います。
第一生命グループは個性と挑戦心溢れる皆さんを心から歓迎し、皆さんが思い切り活躍できるような環境を整える努力を惜しみません。私が昔から好きなアフリカの諺に「急ぐなら1人で行け。遠くに行きたいなら皆で行け」という言葉があります。多様な人財が力を結集して進むことが「遠くに行く」、すなわち第一生命グループの持続的な成長への道筋だと思っています。その旅路を進む仲間として皆さんを迎え入れることができるのであれば、これほど嬉しいことはありません。
最後に、私が皆さんに期待していることは4つの勇気です。「目標を掲げる勇気」「目標に向かって一歩踏み出す勇気」「途中でダメなら引き返す勇気」「何度でもチャレンジする勇気」。そんな“勇気”を持った皆さんが、次世代の第一生命グループを担い、さらなる飛躍へと導いてくれることを期待しています。